「以心伝心」という言葉があります。以心伝心とは「文字や言葉を使わなくても、お互いの心と心で通じ合うこと。」という意味で使われることが多いようです。これを手話ゲームに応用しましょう。
ルールは簡単です。ゲーム学習担当があらかじめ「あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわ」までのひらがなを1文字ずつ紙に書いて裏返しにします。それをあらかじめ3人ずつのグループになった人が、前に出て代表一人が裏返しにした「紙」を選んでテーマのひらがなを決定します。決定したひらがなの指文字を使った手話表現を1分間考えます。この1分間考えるというのが「みそ」ですね。そして、一人ずつ順番に表現してもらいます。他の2番目と3番目に表現する人は、後ろを向くなりして前の人の表現をみてはいけません。そして、3人とも同じ表現ならば、「3ポイント」、2人が同じ表現ならば「2ポイント」、3人とも違う表現であれば「0ポイント」とします。また、前に出て考える時間の時に相談したり、前の人が表現する時に覗き見して真似したりした場合は、−5ポイントとします。これを全体で繰り返して一番ポイントが低かったグループが罰ゲームとして何か即興の手話劇をしてもらいます。
わかりやすくするために実況中継をしてみますね。
司会者「それではAグループの3人の方々は、前に出て、代表者の人が机の上に裏向けに置いた紙の中から好きなものを1つ選んでください。」
Aグループの3人が前に出て、代表者が1枚紙を選びました。
司会者「Aグループは『ぬ』という文字を選びました。それでは今から1分間各自離れて考えてください。お互いの相談をした場合は−5ポイントですよ。では、1分間スタートです。」
1分経過後に
司会者「それでは一人ずつ『ぬ』の字を使った手話表現をしてもらいます。2人目と3人目の人は、それぞれ違う壁の方をむいておいてください。1人目の人は、みんなの方をむいて指文字の『ぬ』を使った手話表現をしてください。」
Aグループの1人目の人が「盗む」という表現をしました。
司会者「わかりました。それでは2人目の人に表現をしてもらいます。」と、壁に向いて立っている2人目の人の肩をたたいて、中央につれてきます。
司会者「では、指文字の『ぬ』を使った手話表現をしてください。」
Aグループの2人目の人は、「はてな?」という表現をしました。
司会者「わかりました。それでは3人目の人に表現をしてもらいます。」と、壁に向いて立っている3人目の人の肩をたたいて、中央につれてきます。
司会者「では、指文字の『ぬ』を使った手話表現をしてください。」
Aグループの3人目の人は、「盗む」という手話表現をしました。
その瞬間会場はどよめき、掌をひらひらさせて「おめでとう」や「すばらしい」という手話表現が飛び交いました。
実は今の例の『ぬ』であらわす手話表現は比較的めずらしいのですが、私が所属している手話サークルでは最初の方はほとんどすべてのグループが「0点」つまり一致するグループがなかったのです。
例えば
「さ」の場合は「元気」「たまたま」「劇」
「は」の場合は「ニュース」「はさみ」「会社」
「た」の場合は「相談」「お客様」「会長」
その他3人の中で一致する言葉がなかったのです。
まさに「以心伝心」つまり「文字や言葉を使わなくても、お互いの心と心で通じ合うこと」はたった3人の中では難しいということがわかったものでした。ましてや1分間各自で考える時間があるものですから、「あの人の性格ではこんな手話表現をするのではないか」と各自が相手の出す手話表現を裏読みして想像するものですから、ますます当てるのがむずかしくなります。
冒頭の『ぬ』は実は、私自身が所属するグループのときの実例です。私以外の2人はいずれも「盗む
」という手話表現をしていたのですが、私も最初は「盗む」を出そうと考えていたのですが、心の中では「あの2人が『盗む』という悪いイメージの手話表現をだすはずがないのではないか」、と1分間も考えるうちに迷ってしまい、『盗む』以外で指文字の「『ぬ』を使った簡単な表現として『?』をあらわしてしまったのです。グループの発表が終わった後に、「もっと単純に考えなあかんよ。」という駄目だしをいただいて、「1分間考える」ことの奥の深さを思い知った私でした。
その時の臨場感を直接お知りになりたい方は078-779-2259までお電話いただけると直接お伝えさせていただきたいと思っています。
そして、各グループの2周目、3周目と進むうちに、残りの「ひらがな」も少なくなるうちに、『あ』だったら「案」で統一しましょう。『い』だったら「インフルエンザ」で統一しましょう、というように各グループが自分の座席に座っているうちに相談することは作戦ですね。前に出てからの相談はいけない、というルールですので自席で相談するのは構わないわけですね。
でも、最初は40以上もある「ひらがな」ですから相談するのはかなり難しいですが、残りの「ひらがな」が10個をきるようになれば、ある程度ヤマをかけて相談するとこも可能ですね。
そういう相談をするうちにろう者や健聴者という垣根をとっぱらった「連帯感」が生まれることも、このゲームの素晴らしい点だと思います。
最終的な罰ゲームに関しては、司会者がご自身のサークルの実情や該当のグループのメンバーに応じでアドリブで考えられても良いかと思います。
とにかく今回ご紹介した「以心伝心ゲーム」は私が参加させていただいたところでは「人の心を読むことはなかなかむずかしい」ということで、「とても盛り上がった」楽しいゲームでした。
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「17.すぐに反対ゲーム」を見てみる。